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『国宝』あらすじ・感想まとめ!3時間の大作を見どころからラストまで完全ガイド

映画『国宝』とは?壮大な歌舞伎人生を描いた超大作

映画『国宝』は、吉田修一の同名小説を原作に、『悪人』『怒り』の李相日監督が映像化した歌舞伎映画の傑作です。

任侠の一門に生まれながら、その類まれな美貌と才能によって歌舞伎の世界に飛び込んだ男・立花喜久雄が、やがて人間国宝へと至るまでの激動の人生を描いています。

主演は吉沢亮と横浜流星。

二人の美しい女形姿と迫真の演技が話題を呼び、2025年公開の邦画実写作品として大ヒットを記録しました。

上映時間は約3時間という長尺ながら、観る者を飽きさせない濃密なストーリーテリングが魅力です。

渡辺謙、高畑充希、寺島しのぶ、森七菜、田中泯といった豪華キャスト陣も作品に深みを与えていますよ。

『国宝』の基本情報

公開年

2025年6月6日公開

監督

李相日

原作

吉田修一『国宝』(朝日新聞出版)

主演

吉沢亮、横浜流星

上映時間

約175分(2時間55分)

歌舞伎という日本の伝統芸能を舞台に、血筋と才能、友情と嫉妬が複雑に絡み合う人間ドラマが展開されます。

歌舞伎に詳しくない方でも十分に楽しめる作品ですので、ぜひ劇場でご覧になってみてください。

映画『国宝』のあらすじを詳しく解説【ネタバレ注意】

ここからは映画『国宝』のあらすじを詳しくご紹介していきます。

物語の核心に触れる内容を含みますので、ネタバレを避けたい方はご注意ください。

喜久雄と半二郎との運命的な出会い

物語は1964年、長崎から始まります。

任侠一家・立花組の宴席で、組長の息子である15歳の喜久雄は、女形として舞を披露していました。

その美しさに魅了されたのが、上方歌舞伎の名門当主・花井半二郎です。

しかしその宴席は、敵対する組の襲撃によって血の海と化します。

喜久雄は目の前で父・権五郎が命を落とす瞬間を目撃してしまいました。

天涯孤独となった喜久雄は、背中に父と同じ彫り物を入れ、復讐を誓います。

ですが襲撃は失敗に終わり、長崎にいられなくなってしまうんです。

そんな喜久雄を引き取ったのが、あの花井半二郎でした。

喜久雄の天性の才能を見抜いた半二郎は、彼を歌舞伎の世界へと導いたのです。

トウハンコンビの誕生と青春時代

花井家で喜久雄を待っていたのは、半二郎の息子で同い年の俊介でした。

最初はよそよそしかった二人ですが、厳しい稽古を共にするうちに、かけがえのない親友となり、同時にライバルとして切磋琢磨するようになります。

7年後、喜久雄は花井東一郎の名を与えられ、正式に半二郎の部屋子となりました。

そして二人は、美しい女形コンビとして『藤娘』や『二人道成寺』を演じ、一躍スターとなります。

世間からは「トウハンコンビ」と呼ばれ、若手女形として注目を浴びるようになりました。

この時期、喜久雄を支えていたのは、幼馴染の春江の存在です。

喜久雄を追って上阪してきた春江は、彼を陰ながら支え続けていました。

ですが喜久雄は京都の舞妓・藤駒と関係を持ち、やがて娘も生まれます。

喜久雄が春江にプロポーズしたとき、春江は「いま上り坂だから」と遠回しに断るんですよ。

代役事件で軋み始める二人の友情

順風満帆に見えた二人の関係に、大きな亀裂が入る事件が起こります。

半二郎が事故で入院し、『曽根崎心中』の舞台に穴が開いてしまったのです。

誰もが跡取りである俊介が代役を務めると思っていました。

ところが半二郎は、喜久雄を指名したのです。

世襲制を重んじる歌舞伎界では衝撃的な出来事でした。

俊介の母・幸子は激怒しますが、半二郎の決断は変わりません。

喜久雄は病室で半二郎から厳しい指導を受け、必死に役をモノにしていきます。

本番当日、緊張で震える喜久雄の化粧を手伝ったのは俊介でした。

「俊坊の血をガブガブ飲みたい。俺には守ってくれるものは何もない」と涙を流す喜久雄。

俊介は黙って涙を拭い、喜久雄を舞台へ送り出しました。

喜久雄の演技は見事成功します。

ですが客席で舞台を観ていた俊介は、実力の差を痛感し、会場を去ってしまいます。

それを追いかけたのが春江でした。

涙する俊介に「分かっているよ」と寄り添った春江は、そのまま俊介とともに姿を消してしまうのです。

俊介の失踪と喜久雄の栄光と転落

俊介が失踪してから数年が経ちました。

糖尿病を患っていた半二郎は、三代目を喜久雄に譲ることを決めます。

襲名パレードの日、藤駒と娘の綾乃が晴れ姿を見に来ていましたが、喜久雄は世間体を気にして無視しました。

そして襲名公演の最中、舞台上で半二郎が吐血し、そのまま亡くなってしまいます。

「俊介、俊介、俊介」と息子の名を呼び続けた半二郎。

喜久雄は「すみません、すみません」と震えることしかできませんでした。

三代目を名乗った喜久雄ですが、思うようにいきません。

そんな時、俊介が春江と子どもを連れて帰ってきます。

人間国宝・小野川万菊の後押しで、花井半弥として歌舞伎界に復帰した俊介。

一方の喜久雄には悪評が立ち始めます。

背中の彫り物の隠し撮り写真、隠し子の存在、花井家乗っ取りの噂など、次々とスキャンダルが降りかかりました。

さらに上方歌舞伎の名門・吾妻千五郎の娘である彰子と関係を持ち、激怒した吾妻に殴り飛ばされます。

彰子は父と絶縁してまで喜久雄についていきますが、花井家には居場所がありません。

喜久雄は幸子に土下座して謝罪し、俊介と殴り合いの喧嘩になった後、家を出ていきました。

地方巡業と万菊との再会

花井家を出た喜久雄と彰子は、地方を転々としながら小さな宴会で女形を披露する日々を送ります。

車がパンクしたり、客に「ニセモンが!」と殴られたり、散々な目に遭いました。

心が荒んでいく喜久雄を見て、彰子も去っていきます。

そんなどん底にいた喜久雄に、人間国宝・小野川万菊が会いたがっているという連絡が入ります。

寝たきりとなった万菊は、喜久雄に扇子を渡して「舞え」と命じました。

この出会いが、喜久雄の人生を再び変えていくことになります。

二人の再会と最後の舞台

数年後、喜久雄と俊介は和解し、再び『二人道成寺』を共演する姿がありました。

しかし俊介は父と同じく糖尿病を患っており、病状が悪化して片足を切断することになります。

それでも俊介は「片足でも『曽根崎心中』をやりたい」と喜久雄に告げるんです。

喜久雄は「なら俺が徳兵衛をやるわ」と応えます。

あの時のやり直しが始まったのです。

舞台で俊介が体勢を崩し、立ち上がれなくなっても、喜久雄は決して中止しませんでした。

それは友を想ってのことだったんですよ。

この舞台の後、俊介は病状が悪化して亡くなります。

人間国宝へ、そして美しい景色

俊介を失った数年後、喜久雄はついに人間国宝に指名されます。

記者会見の撮影で、カメラマンの女性が喜久雄に問いかけます。

「藤駒っていう舞妓を覚えていますか?」

彼女こそ、喜久雄と藤駒の娘・綾乃だったのです。

喜久雄は最初から気づいていました。

綾乃は「父親だと思ったことはない」と言いながらも、「舞台を見ているとどこか遠くへ連れて行ってくれる気がして、気付けば拍手していた」と告白します。

喜久雄は静かに頷きました。

そして国宝となった記念舞台『鷺娘』を上演します。

舞台が終わり、幕が降ろされた時、喜久雄の目に映ったのは、ずっと探していた美しい景色でした。

「きれいだな」

喜久雄の呟きとともに、物語は幕を閉じます。

映画『国宝』の見どころポイント

吉沢亮と横浜流星の圧巻の女形演技

何といっても本作最大の見どころは、吉沢亮と横浜流星による美しい女形姿です。

二人とも約1年半にわたる厳しい稽古を重ね、歌舞伎の所作や踊りを体得しました。

白塗りの化粧、艶やかな衣装、指先まで神経が行き届いた仕草。

男性とは思えないほどの女性らしさを表現しています。

特に『二人道成寺』や『鷺娘』のシーンは圧巻ですよ。

友情と嫉妬が入り混じる二人の関係性

喜久雄と俊介の関係は、単純な友情では語れません。

親友であり、兄弟であり、ライバルでもある。

血筋という恵まれた環境の俊介と、天涯孤独で這い上がった喜久雄。

才能では喜久雄が勝り、俊介は葛藤します。

ですが最後まで二人は互いを必要とし、高め合っていくんです。

この複雑で美しい関係性に心が揺さぶられますよ。

歌舞伎の世界を体感できる映像美

本作では『積恋雪関扉』『藤娘』『二人道成寺』『曽根崎心中』『鷺娘』といった名作歌舞伎演目が登場します。

煌びやかな衣装、精巧な舞台装置、役者の迫真の演技。

歌舞伎を観たことがない方でも、その美しさと迫力に引き込まれるはずです。

また、稽古シーンや楽屋裏の様子も丁寧に描かれており、歌舞伎役者の日常を垣間見ることができますよ。

血筋と才能というテーマの深さ

歌舞伎界は世襲制が色濃く残る世界です。

「血が守ってくれる」という半二郎の言葉が象徴するように、血筋は大きな意味を持ちます。

ですが喜久雄には血筋がありません。

あるのは才能と努力だけです。

才能が血筋を超えた時、何が起こるのか。

この問いに向き合い続けた喜久雄の姿は、観る者の心に深く刺さります。

そして最後、喜久雄にとって血筋は呪いではなく祝福へと変わっていくんです。

豪華キャストの名演技

吉沢亮、横浜流星の二人だけでなく、脇を固める俳優陣も素晴らしいです。

渡辺謙が演じる半二郎の威厳と哀愁、寺島しのぶが演じる幸子の強さ、高畑充希が演じる春江の切なさ。

人間国宝・万菊を演じた田中泯の存在感も圧倒的です。

さらに森七菜、三浦貴大、永瀬正敏といった実力派俳優たちが作品に深みを与えていますよ。

映画『国宝』を観た感想と評価

3時間があっという間に感じる濃密な物語

正直、3時間という上映時間を聞いた時は「長いかも」と思いました。

ですが実際に観てみると、あっという間だったんです。

喜久雄の人生があまりにも波乱万丈で、次々と展開する出来事に目が離せません。

幸せと不幸が交互に訪れ、友情と嫉妬が絡み合い、才能と血筋がぶつかり合う。

その全てが必然性を持って描かれているので、退屈する暇がありませんでした。

李相日監督の構成力と演出力の高さを実感しましたよ。

喜久雄と俊介の友情に涙が止まらない

この映画で最も心を打たれたのが、喜久雄と俊介の関係性です。

二人は何度もすれ違い、傷つけ合います。

代役事件で俊介が失踪した時は、本当に辛かったです。

でも俊介は「必ずお前を引っ張ってやるからな」と言ってくれたんですよね。

そして片足を失ってもなお『曽根崎心中』を演じきった俊介の姿に、涙が溢れました。

喜久雄が決して舞台を中止しなかったのは、俊介の想いを受け止めたからでしょう。

二人の友情は、どんな困難も乗り越える強さを持っていたんです。

「血筋」というテーマが重く響く

映画を観終わった後、「血筋とは何か」を深く考えさせられました。

喜久雄は任侠の血を引き、背中に彫り物を背負っています。

歌舞伎界では異端者です。

でも才能は誰よりもありました。

「血が守ってくれない」喜久雄は、ただ芸に全てを捧げるしかなかったんですよね。

一方の俊介は名門の血を引きながら、才能では喜久雄に及びません。

その葛藤が彼を苦しめます。

でも最後、喜久雄は実の娘・綾乃に出会い、血の繋がりを祝福として受け入れるんです。

雪が舞う中で見た「きれいだな」という景色は、もう血が呪いではなくなった証だと感じました。

吉沢亮の鬼気迫る演技に圧倒された

吉沢亮さんの演技には本当に圧倒されました。

少年期から晩年までを演じ分け、喜久雄という複雑な人物を見事に表現しています。

特に舞台で女形を演じるシーンは息をのむ美しさです。

でも楽屋では男としての荒々しさや脆さも見せる。

そのギャップが喜久雄という人間の多面性を際立たせていました。

横浜流星さんが演じる俊介も素晴らしかったです。

名門の御曹司として育ちながら、才能ある喜久雄への嫉妬に苦しむ姿がリアルに伝わってきました。

片足を失っても舞台に立つ姿には、鬼気迫るものがありましたよ。

歌舞伎初心者でも十分に楽しめる作品

私自身、歌舞伎についてはほとんど知識がありませんでした。

でもこの映画は、歌舞伎に詳しくなくても十分に楽しめます。

演目の内容や背景も自然に理解できるように描かれていますし、何より人間ドラマとしての完成度が高いんです。

喜久雄の人生そのものが、一つの壮大な物語になっています。

歌舞伎を通して描かれる人間の欲望、葛藤、友情、愛。

これらは普遍的なテーマなので、誰が観ても心を動かされるはずですよ。

ラストシーンの「きれいだな」に込められた意味

映画の最後、喜久雄が舞台の上段を見上げて「きれいだな」と呟くシーン。

このセリフが全てを物語っていると感じました。

喜久雄と俊介は、いつも舞台の上段を眺めて「あそこには何があるんやろなぁ」と話していました。

それは二人が目指していた境地であり、美しい景色だったんです。

人間国宝となり、全てを失い、全てを得た喜久雄が、ついにその景色を見ることができた。

それは芸に全てを捧げた者だけが辿り着ける場所だったのでしょう。

雪が舞い散る中での「きれいだな」という言葉に、喜久雄の人生全てが凝縮されていると感じました。

映画『国宝』のキャスト情報

立花喜久雄/花井東一郎(吉沢亮)

任侠の一門に生まれ、天涯孤独となった後、歌舞伎の世界に飛び込む主人公。

類まれな美貌と才能を持ちながら、血筋がないゆえに苦悩します。

やがて人間国宝へと上り詰める波乱万丈の人生を歩みます。

大垣俊介/花井半弥(横浜流星)

上方歌舞伎の名門・花井家の御曹司。

喜久雄の親友であり、生涯のライバル。

血筋に恵まれながらも、才能では喜久雄に及ばないことに葛藤します。

糖尿病で片足を失いながらも舞台に立ち続けました。

花井半二郎(渡辺謙)

上方歌舞伎の名門当主。

喜久雄の才能を見抜き、引き取って育てる。

厳格でありながら、芸に対する情熱は誰よりも強い。

糖尿病を患い、襲名公演の舞台上で命を落とします。

福田春江(高畑充希)

喜久雄の幼馴染で恋人。

喜久雄を追って上阪し、陰ながら支え続ける。

喜久雄からのプロポーズを断り、やがて俊介とともに姿を消します。

大垣幸子(寺島しのぶ)

半二郎の妻で俊介の母。

息子を差し置いて喜久雄を代役に選んだ半二郎に激怒します。

花井家を守ろうとする強い女性です。

小野川万菊(田中泯)

当代一の女形で人間国宝。

喜久雄と俊介の才能を認め、時に助言を与える存在。

寝たきりとなった晩年、喜久雄に「舞え」と命じます。

彰子(森七菜)

上方歌舞伎の名門・吾妻千五郎の娘。

喜久雄に惹かれ、父と絶縁してまで彼についていきますが、やがて去っていきます。

その他のキャスト

竹野(三浦貴大)

スポンサー『三友』の社員で、喜久雄を支える存在。

藤駒(見上愛)

京都の舞妓で、喜久雄の愛人。娘・綾乃を産みます。

立花権五郎(永瀬正敏)

喜久雄の父で任侠・立花組の組長。抗争で命を落とします。

少年・喜久雄(黒川想矢)

15歳の喜久雄を演じた子役。圧倒的な存在感を見せました。

少年・俊介(越山敬達)

少年期の俊介を演じた子役。

豪華キャスト陣が織りなす人間ドラマは、観る者を圧倒しますよ。

まとめ:映画『国宝』はこんな人におすすめ

映画『国宝』は、歌舞伎の世界を舞台に、血筋と才能、友情と嫉妬が複雑に絡み合う壮大な人間ドラマです。

吉沢亮と横浜流星の圧巻の女形演技、李相日監督の緻密な演出、豪華キャスト陣の名演技が融合した傑作と言えるでしょう。

3時間という長尺ですが、濃密なストーリーテリングであっという間に感じられますよ。

こんな方にぜひ観ていただきたいです。

人間の葛藤や友情を描いた重厚なドラマが好きな方。

日本の伝統芸能や文化に興味がある方。

吉沢亮さん、横浜流星さんのファンの方。

泣ける映画、感動する映画を求めている方。

血筋や才能といった普遍的なテーマについて考えたい方。

喜久雄が最後に見た「きれいだな」という景色。

その景色を、ぜひあなた自身の目で確かめてみてください。

芸に全てを捧げた男の人生が、きっとあなたの心に深く刻まれるはずですよ。

映画『国宝』は、観る者の人生観をも変える力を持った作品です。

劇場で、あるいは配信で、ぜひこの壮大な歌舞伎人生ドラマを体験してみてくださいね。